誕生日おめでとう。

なんとか仕上がったので、UPします。
感想等いただけると嬉しいです。
言わなくても分かるとは思いますが、ゆりももです♪




今日もあたしは屋上にいた。
寝転がって水色の空を見ると、飛行機雲が白くて長い尾を引いている。
そう、ちょうど3ヶ月前と同じように・・・。







飛行機雲







「桃、次数学だけどどうする?」


「数学かぁ。んー、たぶん聞かなくても分かるからパス。」


「わかった。先生に言っとくね。」



あまりにも桃が授業をサボるせいか、いつの間にか授業前には「次の授業はどうする?」と聞かれるようになっていた。
ま、大抵数学と社会は出ないんだけどね。
眠いし。
それはともかく、今日は空が綺麗だから屋上に行きたいな。


「じゃ、あとはよろしく〜。」


桃子はゆっくり伸びをしてから、お気に入りの場所へと向かった。




□□□




「うーん、やっぱり今日は空がきれい!」
そう言いながら梯子を上っていくと、珍しく先客がいた。
それも、制服の感じからして下級生っぽい。



「ねぇ、ちょっと。中1か中2か知らないけど、そんな早いうちから授業サボってたら桃みたいになっちゃうよ?」


「へ?」



肩より20センチくらい長い髪をなびかせ振り返った女の子。
名札を見ると、苗字の下には黄色いライン。
ふーん、熊井さんね。



「1年生って・・・まだ入学して1ヶ月しか経って無いじゃん。何かあったわけ?」



「いえ、ちょっと今日は寝坊しちゃって・・・。あ、でも大丈夫です。2限目から出ますから。」



ちょっと怯えたような、焦ったような返答。
そんなに桃が怖いかなぁ。
あ、3年だからか。



「あのー、・・・・・・先輩は授業に出なくても平気なんですか?3年生なら進学とかに影響が出そうな感じですけど。」



「あ、これね『つぐなが』って読むの。授業なんて出なくたって平気だよ。説明聞かなくても分かるし、出席日数は仲いい先生が揉み消してくれてるから。」



熊井って子は目を見開いた後、何かを思い出したらしく小さく「あっ」と言った。



「もしかして紺碧の四神の一人、3年7組の嗣永桃子先輩ですか?」



「もしかしちゃうけどさー、なんで桃の下の名前知ってんの?」



「だって有名ですもん。『紺碧の四神』の青龍は授業サボってばっかりなのに、成績は学年トップのツワモノだって。それに、一人称が『桃』だし。」



1年生にも名前が知れてるとは嬉しいような、悲しいような・・・。
有名になってる理由が理由だしなぁ。
苦笑いを浮かべて突っ立ってたら彼女が手招きしてきたから大人しく隣に座った。




「自己紹介が遅れました。1年3組の熊井友理奈です!」



にっこりと笑っていった彼女の口元を見ると、まだ幼さの残る前歯が覗く。
顔可愛いし、この体格ならスポーツ出来そうだな。
これで勉強も出来たら、ひょっとしてひょっとするかも。*1



「あ、ちょっと先輩見てくださいよ!ほら、飛行機雲!」



指差された方向に目線を向けると、小さな氷の粒によって、長い軌跡が描かれている。
上空は湿度高いのか。
それにしても・・・はしゃぎ方が年相応って感じ。
随分前に冷め切っちゃった桃とは大違いだ。



「ふーん、飛行機雲ねぇ。でもあれ、エンジンから出た排気ガスに含まれる水蒸気が冷えて固まったものだよ?そんな感動するほどのものじゃないと思うんだけど。」



「え、そうなんですか?!さすがは四神。物知りですね・・・。」



「いや、別に大したことじゃないっしょ。あ、敬語気持ち悪いからタメ口でいいよ。」



「え、じゃぁ・・・ももちって呼んでもいい?」



「どーぞ。じゃ、友理って呼ばせてもらうね。」





それから、あたし達はずっと話していた。
友理は「2限目から戻る」とか言ってたくせに、結局1日サボりだし。
ま、桃が裏で操作しといたから先生に怒られる心配は無いけどね。




たぶん、その日からだと思う。
毎日友理と屋上で話すようになったのは。
さすがに毎日サボるわけにもいかないから、休み時間とか放課後にだけど。



□□□



「もーもち!今日もここにいたんだ?」



「あ、友理。今ね、友理と初めて会った日のこと思い出してたの。」



あの日と同じように、2人で並んで座る。
チラッと友理の方を見たら、優しい笑みを浮かべて手を握ってくれた。



「友理、ずっと言おうと思ってたんだけど・・・桃、友理にすごく感謝してるよ。友理のおかげで今毎日が楽しいんだ。いつもありがとう。それから・・・Happy Birthday.」



「ありがと。あたしも、ももちと出会って世界が変わった感じだよ。」



「ねぇ友理、誕生日プレゼントがあるの。10秒くらいでいいから目瞑っててもらえる?」



「うん?別にいいけど?」



不思議そうに首をかしげながらも、何だかんだ言って桃の望むとおりにしてくれる。






ちょっと腰を浮かせて、友理の軽く閉じられた唇に自分のものを重ね合わせると・・・友理の目がパッと開いた。



「んっ・・・」



「もう!目閉じててって言ったでしょ。」



「ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃった。」





茜色の夕日に照らされた2人の影はぴったりと寄り添ったまま。
初めてのキスは何故か、レモンじゃなくて甘酸っぱいオレンジの味がした・・・。







【おまけ】
ル ’ー’リ<ねぇ友理、何でオレンジ味のキスだったんだろうね?
川*^∇^)||<あ、あたし屋上に行く直前まで飴食べてたの。ペ○ちゃんのペロペロキャンディ!
ル; ’ー’リ<・・・ロマンティックには程遠いね・・・。

*1:ひょっとしたら『山吹の四神』になっちゃうかもって意味ね。